実験室 Vol.11

がんばれ! 電子ブック!

とりあえず手元にあった電子ブックを並べてみました。けっこうありますね。
 今回は目新しいグッズではありません。電子ブックという古典的な存在です。電子ブックって知ってますよね。知らない人は、まずこちらの「電子ブック」のページを見てください。
 この世に始めて電子ブックが現れたのが1990年7月と10年も前のこと。ソニーより電子ブックプレーヤー「DD-1」が発売され、また同時に出版社各社より電子ブック17種類が登場しました。それからぐんぐん電子ブックのタイトル数は増え、今では200くらいはあるんじゃないかと思います。いろんな電子ブックがありますが、中心はデータベース系、特に辞書が多い。今、どんなタイトルが出ているかは電子ブックライブラリーを見てください。
 そうそう、「どこで電子ブックを買えるか」ですが、大手書店や一部の電器店で扱っています。できるなら電子ブックを扱う電器店を探した方がいいでしょう。書店では基本的に定価販売となるので、ちょっと高く付いてしまいます。
 僕が電子ブックにこだわるのは、どんな辞書でも同じソフトで調べられるため。パソコン用の辞書ソフトは電子ブック以外にもいろいろあるけれど、すべて専用ソフトと一緒に使うようになっています。つまり、国語辞典と英和辞典とで別の操作方法を覚えなければならないということです。また、いくつものソフトを同時に起動するというのはメモリーの浪費ですし、システムの安定性を損なうことになるかもしれません。
 もちろんシステムソフトなどは辞書をシリーズ化していて、そのシリーズで統一するという手もあります(こちらからどうぞ)。でも、一社があらゆるジャンルの辞書を揃えるわけにはいかない。やはり辞書用の規格をつくっておき、出版社がその規格にのっとった辞書ソフトを出すというのが望ましいやりかたです。
 電子辞書といっても、一から作りなおすのではありません。紙の辞書も今ではデータベース化された情報を元に作っているので、それをCD-ROMの形に変えただけなんですね。だから、辞書CD-ROMの形式さえ決めておけば、本当に変換作業+αで電子辞書ができてしまうのです。

電子辞書って便利だよ

これが電子ブック。カートリッジに入っていて、見た目は厚めのフロッピーディスクというかんじ。
 電子辞書のメリットですが、なによりも検索がはやいところでしょう。誰でも中学校のときに「めんどくさー」と思いながら英語の辞書を引いた経験があるでしょう。それが電子辞書ならキーボードから単語を打ち込むだけでたちどころに意味が画面に出てくるのです。こんな便利なものがあったら、中学校の宿題ももっと早く終わってたのにねー。
 また、紙の辞書では実現できないような柔軟な検索も可能です。たとえば、国語辞典で「っぽい」で終わる言葉だけを抜き出すなんてことができます(これを後方一致検索と呼ぶ。試しに広辞苑で検索すると「あだっぽい」「艶っぽい」「色っぽい」「惚れっぽい」「水っぽい」など25個が引っかかりました。中には「とっぽい」なんてのもあります(今どき使うか?)。この後方一致検索、使いようによってはいろいろ楽しめそうです。
 さらに、見出しではなく本文の単語から探し出すというワザも(条件検索のこと)。ふたたび広辞苑の例ですが、「『吾輩は猫である』を書いたのは誰だっけ?」という場合でも、「吾輩は猫である」をキーワードに検索すると、「夏目漱石」がきちっと出てきます(もっといい例はないのか?)。
 しかも、これらの検索方式はすべての電子ブックに共通で、すべて同じ手順で検索できるのです。これはなかなか便利です。

パソコンでも電子ブックを読める!

カートリッジを開けると、中からは8cm CD-ROMが出てくる。これをCD-ROMドライブにセットする。
 かつては電子ブックを読むため(検索するため)には、専用のプレーヤーを使わなければなりませんでした。数百グラムと軽量であり、かつ電池で動かせるため、どこでも手軽で使えるというメリットがありますが、難点は画面サイズがあまりに小さいこと。初代プレーヤーのDD-1は16文字×10行しか表示できない。なんとも見通しが利かないのです。
 で、おすすめなのはパソコンで電子ブックを読むことです。パソコンの大きな画面で見ることができるし、電子ブックの内容をコピーして、他のワープロソフトなどに張り付けたりすることもできます。
 電子ブックはMOディスクのようなカートリッジですが、この中にはシングルサイズのCD-ROM(直径8cm)が入っています。サイズはちょっと小さいけれどれっきとしたCD-ROMであり、パソコンのCD-ROMドライブにセットすると中身のファイルを見ることができます。一般的なCD-ROM(直径12cm)との違いは容量だけ。12cmが約650MBなのに対し、8cmは約200MBとやや小さい。でも、辞書は基本的に文字データなので、200MBでもじゅうぶんなサイズだと言えます(最近は動画だとかを取り込む動きがあるので、200MBでは足りなくなってきていますが)。
左が8cmで、右が12cm。違うのはサイズと容量だけ。どちらも同じように扱えばいい。 ふつうのCD-ROMドライブならそのままセットできる。ダメな場合はシングルCD用のアダプター(レコード店でも買える)をかませる。

電子ブックに入っていたデータのサイズ

新英和・和英中辞典 75.4MB(79,040,512バイト)
現代用語の基礎知識・92年版 98.0MB(102,754,304バイト)
広辞苑・第四版 173.1MB(182,153,216バイト)
漢字源 39.7MB(41,644,032バイト)
本の探偵・95年版 156.4MB(164,020,224バイト)
クラウン独和辞典 170.2MB(178,495,488バイト)

検索ソフト「DDwin」を使おう

検索ソフトの定番「DDwin」。窓の杜ベクターなどで入手できます。
 パソコンで電子ブックを読むにはソフトが必要。市販ソフトもありますが、おすすめはDDwinというフリーソフトです。市販ソフトとは異なり、すべての電子ブックが読めるという保証はなく、音声再生など一部の機能には対応していません。しかし、大部分の電子ブックは問題なく読めていますし、文字と画像はしっかりと表示されます。何よりものメリットは、他の市販ソフトよりもずっと使いやすいところ(個人的な見解ですが)。パソコン通信などのネットワークで寄せられたユーザーの要望が取り入れられ、かゆいところに手が届く設計です。
 DDwinのもうひとついいところは、ハードディスクにコピーした電子ブックのデータをも検索できるところです。たとえば、ノートパソコンのようにCD-ROMドライブが付いていない機械でも対応できるし、デスクトップではハードディスクにいくつもの電子ブックをコピーしておけば、CD-ROMを入れ替える手間が省けます。それにCD-ROMよりハードディスクの方がアクセスする方がスピーディー(とはいえ、CD-ROMでも一瞬で検索が終わっちゃうんですけど)。
 これが市販ソフトではCD-ROMドライブが必須になります。「携速」(ソース)や「CD革命」(アーク情報システム)のような仮想CD-ROMソフトを使えば、ノートパソコンでも使えないではありませんが、お金がかかるし、メモリーは消費するし、常駐モノが増えると不安定になるし、できれば避けたいところですね。
 電子ブックのデータは大きいものでも180MBくらい(上の表を見てください)。近ごろのノートパソコンは10GBなんて大容量ハードディスクを積んでいるのもあるから、10冊や20冊の電子ブックは楽勝で入ります。ちなみに僕のノートパソコン(7月20日に衝動買いしたCASSIOPEIA FIVA)には8冊の辞書をぶち込んでいます。1キロ足らずのノートの中に辞書8冊分の膨大なデータが入ってるって、なにかそれだけで心が豊かになりませんか?
 僕がWindows95/98の使えるノートパソコンにこだわるのは、DDwinを使いたいがため。これさえなければWindowsCEとかPalmIIIとかコンパクトな端末を使うんですけどね。

電子ブックにも限界が

 というような電子ブックですけど、けっして完全な存在でもない。たとえば、画像は白黒だし、サイズは256×200ドットに限られている。これは電子ブックプレーヤーの画面で表示するためには仕方のない制限でしょう。
 また、カナでの検索しかできず、漢字を使うことはできません。たとえば、読み方の分からない単語を調べることはできないのです。さらにJISコードに含まれていない漢字はひらがなに直されています。こちらは8cmCD-ROMの容量から発生した限界でしょう。
同じ広辞苑第四版なのに3種類も持ってる。左が電子ブック版、右上がEPWING 1.0、右下がEPWING 2.0。そうそう新しく出た第五版も買わないと。
 そこで僕が注目したいのはEPWINGという規格(このページを見てください)。電子ブック(EB規約)とは親戚に当たるもので、EPWINGをコンパクトなプレーヤーでも使えるようにしたのが電子ブックだと考えていいと思います(どちらも独自の発展を遂げていますが)。EPWINGはプレーヤーの制約がないため、漢字での検索もできるし、画像サイズの制限もありません。また、EPWING2.0ではカラー画像に対応し、EPWING3.0では動画もサポートしました。検索ソフトのDDwinでは、動画など一部の機能には対応しませんが、EPWINGの文字と画像は問題なく扱えます。
 ところが、ソニーが強力に推進する電子ブックに比べると、EPWINGはソフトの数が少ない(リストはこちら。最新情報を反映してないようですが)。うーん、機能面では充実しているのに残念ですねえ。広辞苑やリーダーズ英和辞典などの定番は電子ブックとEPWINGの両方があるのですが、もっと選択肢が増えて欲しいものです。
 さらに都合が悪いことに、電子辞書は独自フォーマットで作るという傾向が強まりつつあります。マイクロソフトの「エンカルタ」「ブックシェルフ」(詳細情報はこちら)、日立デジタル平凡社の「マイペディア」「世界大百科事典」(詳細情報はこちら)など、魅力的なタイトルはぜんぶ独自ソフトを利用しています。電子ブックやEPWINGにはマルチメディアデータやネットワークへの対応に限界があることは分かりますが、できれば規格化できないものかなあ。

電子辞書はネットワーク対応に

 電子辞書の将来という点では、インターネット上でデータを提供するという方法も有望です。たとえば、アスキーが提供するコンピュータ用語集「ASCII Glossary Help」は新しい用語もまめに追加されているので、分からない言葉があったときに役立ちます。また、それぞれ用語に関連する言葉にもリンクがはられていて、クリック一つでジャンプできるのも便利です。
 昨年、日経BP社の用語事典の制作をお手伝いしたのですが、紙で出す用語集というのはすぐに情報が古くなってしまうんですね。特にコンピュータ関連の用語集はすぐに古くなってしまいます。本格的な用語集を作ろうとすると、どんなに急いでも半年はかかる。そうなると本が出た時点ではもう情報が古いのです。ネットワークなら最新の情報をすぐに反映できるんですけどね。
 面白いなと思ったのは、マイクロソフトのエンカルタです。CD-ROM(もしくはDVD-ROM)に盛り込めなかった最新情報をインターネットで提供するというサービスを実施してます。CD-ROM/DVD-ROMとネットワークのいいところを集めたもので、将来はこんな方式が主流になるのかな?
 電子ブックの方もネットワークへの対応を進めていて、「NET EB」というフォーマットができあがりつつあるようです。サーバーにはXML文書としてデータを持たせておき、端末に応じたフォーマットに変換して配信するというもの。コンピュータだけでなく、携帯電話やPDAなどさまざまな端末に最適な形態で情報を提供できるようになるそうです。
 まあ、ネットワークで便利になるのはいいんですが、データを貯め込むという所有欲が満たされなくなるという懸念が。「僕のハードディスクにはたくさんのデータが入ってるんだぞお」という満足感が失われてしまう・・・・・・。



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